ポリウレア樹脂とは
他の素材と化学反応を起こしにくく、温度の変化や衝撃にも強い上弾力もある、製品のコーティングや設備のライニングに適した素材です。
スワエール工法は、このポリウレア樹脂の被膜(塗膜)をコンクリート施設(特に水を扱うコンクリート施設)のライニングとして使用する工法で、スワエール上水システムによるポリウレア樹脂の被膜は厚生省令15号 "水道施設の技術的基準を定める省令" 及び日本水道協会 "JWWA K143" に適合しており、上水関連施設への使用も認められています。
近年、ポリウレア樹脂は防水性能と耐薬品性、耐候性だけでなく、コンクリート構造物の弱点の一つである衝撃への対策や、コンクリートより粗度係数が低い事から水路の効率的な運用などの面でも注目を集めています。
ポリウレア樹脂はイソシアネートとアミンが反応して生成されるウレア結合を主体する化合物です。
R-NCO + R'-NH2 → R-NH-CO-NH-R'
の化学反応式で表現され、耐酸性、耐アルカリ性、耐候性、弾性や引張り強度等に優れているなど物性が非常に安定しています。
硬化までの時間も短く安定した施工性もあるため、ポリウレアの被膜はコンクリートや金属のライニングとして利用されるケースが特に多く見られます。
ポリウレア樹脂の特長
- 耐薬品性に優れている
- 強度と伸びのバランスに優れている
- 瞬間硬化、低温硬化
- 防水性能、遮水性能が高い
- 環境安全性が高い
耐薬品性に優れている(耐酸性、耐アルカリ性)
酸性とアルカリ性の両方に耐性があり、安定しているポリウレア樹脂は、水関連施設の保護被膜として大きなアドバンテージを持っています。
例えば下水の場合、酸性の排水によってコンクリートの中性化が進み、構造物としての寿命は短くなります。
しかし、スワエールスプレー工法によるポリウレア樹脂のライニングが施されたコンクリートは下水による中性化が阻止されるため、長期間の運用が可能になります。
長期耐久試験
スワエール協会では独自にスワエールスプレー工法によるポリウレア樹脂の長期耐久試験を行いました。
産業廃棄物処理水にポリウレア樹脂片を浸漬させ5年、10年、15年でその引張り強伸度、透水量、重量変化、外観の測定及び観察を行った所、劣化は認められませんでした。(写真は15年間産業廃棄物処理水に浸漬させたのちに試験を行った時のもの)
引張強度と伸びのバランスに優れている
ポリウレア樹脂被膜によるライニングの優れた点はその防水性の高さですが、その高い防水性を支える性能の一つがこの「引張強度と伸びのバランスの良さ」です。
コンクリートの躯体にひび(クラック)が入った被膜を引っ張っても破断せず伸びますので水を漏らしません。
ゼロスパンテンション試験では10mm以上のひび(クラック)に対して追従するという結果が出ました。
またこの強度と伸張性、収縮性が、コンクリート躯体そのものの強度をあげる性能として注目されています。
ゼロスパンテンション試験
硬化する条件を選ばない(瞬間硬化、低温硬化)
イソシアネートとアミンの混合液は吹き付けられるとすぐに硬化を始めます。
この化学反応はイソシアネートと水の間で起こる反応より速く、化学的に安定したウレア結合をが生成します。
ウレア結合は空気中の湿気や水分の影響を受けにくい樹脂のため、イソシアネートと水分との反応で発生する炭酸ガスによる発泡、膨れを生じません。
また硬化スピードが速いので床、壁、天井に対して、同じ様にスプレーで施工することができます。
防水性能、遮水性能が高い
ポリウレア樹脂の被膜が水関連施設に強い理由は、耐酸性、耐アルカリ性、耐候性(温度変化や紫外線など)などに強く、被膜が傷みにくいことです。また、ポリウレア樹脂の被膜はクラックに追従するので、水槽や水路内の水は外に漏れません。
"JIS A 1404" による試験の結果
- 試験方法:
- JIS A 1404
- 建築用セメント防水剤の試験方法
7.6 透水試験 - 下水道コンクリート構造物の腐食抑制技術及び防水技術マニュアル
3.7 塗布型ライニング工法の品質規格 - 規格値:
- 透水量が0.15g以下 (D種)
- 試験結果:
- 透水量が0.02g以下
環境安全性が高い
スワエールスプレー工法のポリウレア樹脂は有機溶剤を含まず、また、ポリウレア樹脂形成時の化学反応で有毒ガスなどが発生することもありません。
これは、狭い施工環境でも作業安全性を確保しやすく、また近隣に対する配慮も最低限で済むということです。
環境安全性に関わる特徴
スワエールスプレー工法によるポリウレア樹脂の安全性に関わる特徴です。
- 各種溶出試験に合格(上水用途/JWWA K 143,厚生省令第15号)
- ポリウレタンで使用する鉛触媒等の重金属を含まない
- 有機溶剤、環境ホルモンを含まない
(※1998年に環境庁が発表した環境ホルモンと疑われる物質を一切含んでいません。) - 染色体異常試験、Ames試験 (変異原性)の結果、いずれも陰性
ポリウレア樹脂の歴史
ポリウレア樹脂は建材の中では比較的新しい素材で、テキサコ社によって1989年に日本上陸しました。
当初は車のバンパーを加工する材料として技術開発が進んだ様ですが、結局ポリエチレン樹脂がこの目的では主流になりました。
次に、船舶の補強や屋根防水材、外壁の塗装材などポリウレア樹脂の様々な使用に関して検討が加えられましたが、本格的なこの素材の利用は、その耐薬品性の高さに目を引かれた下水道事業団によって、下水道への使用が検討され始めたことがきっかけになりました。
1994年には国内で初めてスワエールスプレー工法によるポリウレア樹脂製ライニングが施工されています。
以降、浄水施設や、養魚場の水槽、下水処理施設などのライニング材として、スワエールスプレー工法によるポリウレア樹脂被膜が使用されています。